脳のエネルギーは糖質だけではない!
「頭を働かせるためには糖分が必要だ」と考え、甘いものを食べている人がよくいますが、それは間違いです。確かに脳だけではなく身体のエネルギーとなるのはブドウ糖です。しかし、人間にはブドウ糖が不足すると脂肪をエネルギーとして使う機能が備わっていて、その際にできる「ケトン体」という物質も脳のエネルギーとして利用できるのです。
つまり、ブドウ糖とケトン体という2つのエネルギー源がある以上、脳の栄養が枯渇することは普通に生きている限りありません。人間にとって糖質は貴重な栄養素なので、食べると幸福を感じるメカニズムになっていますが、ここで欲求を満たすために甘いものを食べたり飲んだりしたらかえって糖質過多で血糖値が上下して頭の働きが鈍くなったりすることもあり、逆にパフォーマンスを落としかねません。
甘いものを食べると頭がスッキリしたと感じる人もいるかも知れませんが、それは急激に血糖値が上がってドーパミンやセロトニンが分泌され「ハイ」な状態になっているだけ。その後にすぐに低血糖に陥り、また甘いものが欲しくなる負のスパイラルに陥る可能性があります。特に血糖値が短時間で上がりやすい液体の糖質には要注意。安易に甘いものは摂らず、血糖値を正常に保つように心がけましょう。
MCTオイルがケトン体を効率的に作る!
日本人の主食が「米」ということからも推測できるように、「ブドウ糖」を主なエネルギー源としています。
個人差はありますが、だいたいごはんを食べた後2~4時間は「ブドウ糖」からエネルギーを確保し、その後何も食べない状態を維持した場合に、体は「ケトン体」をエネルギー源として使いはじめます。
この機能は、もし食料がない状況におかれても、生命を維持できるようにするため。
人間本来の体の機能なので、健康を害することは基本的にありません。
イメージしやすい例として、人間と同じ哺乳類のクマが、冬眠中最低限の食料でも生きていますよね。
それは、体脂肪を「ケトン体」に分解して、エネルギーを確保しているからなのです。
では、実際にケトン体代謝になるための方法を見ていきましょう。ケトン体代謝になるためには、食事が重要なポイント。
ただ糖質を抜けばいいのではなく、体の栄養バランスを維持しながらケトン体代謝になるための食事の黄金比率“ケトン比”に当てはめて、食事を摂れば無理なくケトン体代謝に転換が可能になります。
【ケトン比】=脂質(g)/炭水化物(g)+タンパク質(g)
この式に食事をあてはめたとき、数値が1.5~2になる食事がケトン体代謝になるためのベストな食事。
具体的には、食事の炭水化物を控え、メインを魚や肉などのタンパク質に。
その上で良質な脂肪を摂ります。
特に、脂質をたっぷりとることが一番のポイント。
食べ過ぎた時も、その分脂質をしっかり摂取することでバランスを維持できます。
人類の長い歴史の中で、現代のような常に豊富に食物がある環境は非常にまれであり、私たちは長い間食物をなかなか得にくい環境にありました。そのため、身体は飢餓状態において、身体に蓄えた脂肪を使い、さらにその脂肪をもとに肝臓でケトン体をつくり、それを各細胞のエネルギーとして利用する仕組みになっています。
身体のエネルギー源として、優先的に使われるのはブドウ糖です。そのため通常、体内にブドウ糖が十分にあるときは、ケトン体が作られにくい特性があります。
しかし、ブドウ糖が体内にあるときでも、ケトン体を効率的に作り出す成分があります。その正体は、摂取後、直接肝臓まで運ばれる「MCT(中鎖脂肪酸)」!
血中ケトン体量の変化を調べたところ、一般的な油(LCT)に含まれる長鎖脂肪酸と比べて、同量のMCTを摂取したときのほうが、約10倍も多くのケトン体が作り出されることがわかりました。※ 糖尿病患者がMCTを摂取する場合には、事前に医師に相談が必要です。高血糖状態の人、特に1型糖尿病患者の血液中のケトン体が上昇すると、「糖尿病性ケトアシドーシス」を発症する可能性があります。ただし健常者がMCTを摂取したときに上昇するケトン体の値は、糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こすほど高値にはなりません。