不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のそれぞれの役割
お腹の具合が悪い、お腹がすいたなど、健康状態に大きく影響を及ぼす、「お腹の具合」多くは胃の状態よりも腸の具合によるものが多いのです。
腸は「第二にの脳」と言われるように、多くの作業をしています。
体の“関所”・腸
人の消化器官は、口から肛門まで1本の管でつながっています。
私たちが毎日摂る食事は、口から入っただけでは吸収されません。
胃液や胆汁・膵液で分解され、小腸でほとんどの栄養素が吸収され、大腸では水分が吸収されます。
そのことから、口ではなく腸で吸収されて初めて体内に入ったといえます。
食事は、ロから入って肛門から便として排泄されるまでに、消化管を24~72時間かけて移動します。
その長さは全長約9mにも及部と言われています。
消化管の中で最も長いのが腸で、人が生命を維持するうえで、なくてはならない器官といわれています。
十二指腸・空腸・回腸からできており、最終消化と吸収はほとんどここで行われます。
体の窓口である腸は、消化管に入ってくる栄養素を吸収しながら有害な物質は排泄し、さらに体内に菌が侵入するとリンパ球が攻撃し人体を守ります。
まさに、体の入り口を守る“関所”ともいうべき働きをする極めて重要な器官なのです。
この働き者の腸は、具体的にどんな働きをしているのか、3つの基本的な働きを詳しくみていきましょう。
①食べ物を消化し、栄養素を吸収する
小腸には「消化」と呼ばれる働きが備わっています。
食べ物に含まれる栄養素を吸収されやすい大きさや形に分解します。
消化液で分解
だ液や胃の消化液で、炭水化物とたんぱく質が分解され、腸で脂肪の分解をします。
絨毛から吸収
消化された栄養素は、腸の内側にある絨毛と呼ばれるヒダから体内に取り込まれます。
このヒダを平らに広げると、面積はテニスコート1面分の大きさになるといわれています。
絨毛の内部にはリンパ管や毛細血管がつながっており、栄養素はここを通って体内に吸収されます。
一度肝臓に蓄えられ、その後再構成されて全身へ送られます。
②水分を吸収し、便をつくる
栄養が吸収されると、大腸には食べ物のカスが残ります。
大腸は盲腸・結腸・直腸に分かれています。
小腸より太く直径3~5センチ、長さ1.5メートル位あり、小腸のような絨毛はありません。
水分を吸収し便へ
徐々にカスから水分が吸収され、ほどよい固さの便をつくります。
便は肛門の手前の直腸まで運ばれると、脳に刺激が伝わり、便意を催します。
このように、栄養素が吸収された食べ物のカスからは水分が吸収され便をつくり、それを体外へ排出するのですが、腸の運動が乱れたり、水分が正しく吸収されないと、便秘や下痢を引き起こします。
③外敵などから体を守る
腸と1本で繋がる口からは、食べ物だけでなく細菌やウイルスなどさまざまな病原体も取り込まれてしまいます。
そのため、腸には体にとって好ましくないものを侵入させない働きが備わっています。
腸の内側はネバネバした粘液で覆われ、それが悪い菌の体内への侵入を阻みます。
また、腸は「人体最大の免疫器官」と呼ばれているように、外敵の侵入を感知して排除する「免疫」という仕組みが備わっており、その働きに関わる免疫細胞の半分以上が腸に集まっています。
善玉菌の家になる-不溶性食物繊維
「腸内細菌」の中でも主役を担うのが、腸内で働く善玉菌です。善玉菌が腸内で生き続けるには、家が必要になります。その家となるのが不溶性食物繊維(野菜のセルロース、こんにゃくなど)です。こんにゃくは製造する前のこんにゃく粉(グルコマンナン)の状態では水溶性食物繊維ですが、製造工程で入れる凝固剤で固めたあとには不溶性食物繊維に変化します。
居心地のよい家を得た善玉菌は、腸内で働きながら、大腸の奥深くにある直腸まで運ばれます。その結果、腸内の不要なものが便として排泄され、体内をキレイにできるのです。
特性
- 保水性が高い
胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便通を促進します。 - 繊維状、蜂の巣状、へちま状
よく噛んで食べるので、食べすぎを防ぎ、顎(あご)の発育を促すことで、歯並びをよくします。 - 発酵性
大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。概して、水溶性食物繊維より発酵性は低い。
善玉菌のエサになる-水溶性食物繊維
善玉菌が腸内で生き続けるには、エサも必要になります。そのエサとなるのが水溶性食物繊維( 昆布、わかめなど)であり、善玉菌が好むエサには「食物繊維」と「オリゴ糖」で、それらを摂取することにより腸内で善玉菌数を増やす助けになります。
おいしいエサを得た善玉菌は、腸内で増殖するとともに、短鎖脂肪酸という物質を排出します。これが大腸の粘膜を厚く丈夫にして、毒素の侵入を防ぎ、免疫力を高めてくれるのです。また、血中脂質や血糖値の急激な上昇を抑える可能性もあり、生活習慣病の予防効果が期待されています。
<例> 水溶性食物繊維を多く含む食品
野菜類(ごぼう、にんじん、芽キャベツ、おくら、ブロッコリー、ほうれん草)
豆類(納豆)
いも類(さといも、こんにゃく)
海藻・きのこ類
果物
<例> オリゴ糖を多く含む食品
野菜類(玉ねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス)
果物(バナナ)
豆類(大豆)
特性
- 粘性
粘着性により胃腸内をゆっくり移動するので、お腹がすきにくく、食べすぎを防ぎます。糖質の吸収をゆるやかにして、食後血糖値の急激な上昇を抑えます。 - 吸着性
胆汁酸やコレステロールを吸着し、体外に排泄します。 - 発酵性
大腸内で発酵・分解されると、ビフィズス菌などが増えて腸内環境がよくなり、整腸効果があります。
便をやわらかくしたい場合は「水溶性」、便の量を増やすことで腸を動かしたい場合は「不溶性」とおぼえておくとわかりやすいです。
善玉菌の増殖に特に効果的なのは、「水溶性」の食物繊維です。