摂りすぎは健康によくないと言われる糖質。ここ数年で、糖質制限がダイエット法の主流となり、減量のために主食のごはんや麺類を控える人が後を絶ちません。米や小麦などの穀類やいも類に含まれる代表的な糖質が、デンプンです。実は、デンプンの中には消化・吸収されずに食物繊維と同じ作用を発揮し、太るどころか健康に役立つものがあることがわかってきました。
奇跡の食物繊維「レジスタントスターチ」とは?
普段の食事から毎日摂っている身近な繊維質
以前は、食品に含まれるデンプンはすべてが消化酵素で分解され、小腸から吸収されてエネルギー源になると考えられていました。しかし、その後の研究によって、デンプンの中には消化されずに大腸まで届くものがあることが明らかになりました。こうしたデンプンは「レジスタントスターチ(難消化性デンプン)」と呼ばれています。レジスタントスターチは穀類やいも類、豆類などの食品に少量含まれており、普段の食生活で何気なく摂取している成分です。消化酵素で分解されない成分としてよく知られているのは食物繊維ですが、大腸に流入する難消化性の繊維質としては、レジスタントスターチのほうが多いと言われています。
分解・吸収されにくい性質が、食物繊維と「レジスタントスターチ」の重要な共通点です。とはいえ、レジスタントスターチは、単なる食物繊維の代用品にとどまりません。食物繊維には「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類がありますが、「レジスタントスターチ」はこれらの2つの特徴を兼ね備えているのです。まさに“奇跡の食物繊維”と呼べるでしょう。
腸内環境の改善やメタボ対策に効果的!
レジスタントスターチには、不溶性食物繊維のように便のかさを増やしてお通じをよくしたり、水溶性食物繊維のように腸内細菌のエサになって有用菌の増殖を促したりする機能があります。有用菌がレジスタントスターチの糖を分解し発酵すると、短鎖脂肪酸と呼ばれる酸が作られますが、この短鎖脂肪酸には腸のぜん動運動を活発にしたり、腸内環境を酸性に傾けて有害な菌の増殖を抑えたりするはたらきがあり、腸の健康に欠かせない存在です。中でも酪酸(らくさん)は大腸のエネルギー源となり、正常なはたらきを支える立役者。レジスタントスターチを摂ることで、腸内の酪酸の濃度が高まることがさまざまな研究から明らかになっています。
また、レジスタントスターチを含む食品には食後の血糖値の上昇を穏やかにし、満腹感を持続させる作用があることが健康な人を対象とした試験で確認されています。さらに、レジスタントスターチを摂取することで血液中の総コレステロールやLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が低下することも複数の研究で明らかにされています。食物繊維と同様に、レジスタントスターチはさまざまな面から健康をサポートする成分なのです。
食べるなら、炊きたてよりも冷ましたごはん!?
あまり知られていませんが、日本人の多くは慢性的に食物繊維が不足気味。レジスタントスターチは、そんな現代人の繊維不足を解消する切り札になると期待されています。糖質制限ブームの影響で食べる量を減らしてしまいがちな穀類やいも類は、レジスタントスターチの供給源。もちろん食べ過ぎはよくありませんが、減らしすぎるのも考え物です。穀類やいも類に含まれるレジスタントスターチは、加熱調理すると構造が変化して消化されるようになりますが、冷めると再び消化されにくい繊維質に変化します。つまり、穀類やいも類は、調理したてよりも冷めた状態のほうがレジスタントスターチが豊富ということ。レジスタントスターチをたっぷり摂りたいなら、おにぎりや寿司、サラダなどで食べるのがおすすめです。
日々の食事で「レジスタントスターチ」を摂取しよう
一般的に食物繊維の摂取目標は1日約20gとされますが、意識的に摂取しないと不足しがちになります。そこで「レジスタントスターチ」の出番です。「レジスタントスターチ」を含む食品は4タイプあり、日々の食事で手軽に摂取できます。
【タイプ1】米、パスタ、大豆、全粉粒など。炊く前の米は「レジスタントスターチ」が豊富ですが、炊くと「消化されやすいでん粉」に変化します。パスタの場合、アルデンテで茹でれば「レジスタントスターチ」が残ります。 | 【タイプ2】未熟の緑色のバナナ、特定品種のトウモロコシ、コーンスターチなど。料理やお菓子作りのとき、小麦粉の一部を代わりにコーンスターチに代えて使うとよいでしょう。 |
【タイプ3】一度炊いた後でも冷めると元の米に近い(消化されにくい)でん粉状態に戻ります。おにぎりにして1時間ぐらい冷ましておくか、コンビニのご飯をおにぎりに変えるだけでも効果あり!? | 【タイプ4】各種加工食品に含まれる加工でん粉。 |